疾患別(プライマリ・ケア医が診る感染症)

2024-10-23肺炎

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎

嚥下機能が低下した高齢者では、唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に病原微生物を気道に吸引しています。その結果、病原性細菌が増加する細菌性肺炎や胃酸などの刺激による化学性肺臓炎を発症します。実際には、この2つの要素は同時に起きていることが多いと思われます8)

背部からも必ず聴診するようにします。通常、誤嚥した残渣は背部へと垂れ込んでいるため、クラックルは胸部ではなく、背部で優位に聴取されます。

スパイク状の発熱を認めるのみで全身状態の変化が乏しければ、感染症ではなく化学的刺激への反応が主であるかもしれません。そのたびに抗菌薬を使用するのではなく、食事の姿勢や内容を検討したり、経管栄養であれば量や回数を調整したりすることを優先します。

明らかに嚥下障害を認める高齢者だけでなく、気づかれないで誤嚥している人は少なくありません。とくに、寝たきりの高齢者では胃食道逆流が発生しやすく、化学的刺激による肺炎が引き起こされやすいです。また、安定剤の過量投与などによる意識の低下がある人では、口腔内からの気づかれない誤嚥リスクが高まっています。

誤嚥するだけでも発熱しますし、一時的にSpO2が低下します。自然経過で軽快するのなら、抗菌薬を使用せずに見守りながら再燃がないことを確認します。

緩徐に進行する肺膿瘍など、嫌気性菌が誤嚥性肺炎の起因菌となることもありますが、急性の発症であれば、口腔内に常在する肺炎球菌やインフルエンザ菌が起因菌となっていることが多いです。よって、誤嚥性肺炎だからといって、必ずしも嫌気性菌をカバーする必要はありません。

誤嚥性肺炎の治療

軽症であって入院させずに治療するのでしたら、経験的にはアモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン配合錠®)とアモキシシリン(サワシリンカプセル®)を併用します。

中等症以上であればセフトリアキソン(ロセフィン®)を静脈注射します。比較的経過が長いなど、嫌気性菌のカバーが必要と考えるときは、クリンダマイシン(ダラシンカプセル®)の経口投与を重ねると良いです。

誤嚥性肺炎の治療
軽症アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン配合錠250RS®)1錠とアモキシシリン(サワシリンカプセル®)1回250mgを併用して1日3回、5~7日間経口投与する。
中等症以上セフトリアキソン(ロセフィン®)1gを24時間おきに5~7日間静脈注射する。ただし、症状が改善したところで残りの日数はアモキシシリン・クラブラン酸とアモキシシリンの併用に変更してよい(血培陽性を除く)。
〔嫌気性菌の関与も疑うとき〕上記に併用して、クリンダマイシン(ダラシンカプセル®)1回300mgを1日3回経口投与する。

参考文献

8)Marik PE. Aspiration pneumonitis and aspiration pneumonia. N Engl J Med. 2001 Mar 1;344(9):665-71.

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