疾患別(プライマリ・ケア医が診る感染症)

2024-10-23肺炎

異型肺炎

高齢者の肺炎全体に占める異型肺炎の割合は高くありません。しかし、呼吸器症状に加えて、意識変容、頭痛、関節痛、筋肉痛、消化器症状などの肺外症状を認めるとき、家庭内や施設内における集団発生を認めるときは、マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラなどの異型肺炎も疑う必要があります。

マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は2~3週間です。全身倦怠感、発熱、頭痛などの症状に始まり、その3~5日後に乾性咳嗽を認めます。咳嗽は解熱後も3~4週間続くことが多く、同居する家族(とくに若年者)など周囲に上気道症状が長引く者がいれば、マイコプラズマが起因菌である可能性を疑います。

Chlamydophila pneumoniaeによる肺炎の潜伏期間は3~4週間と長く、高齢者施設において長期にわたって流行することがあります。肺炎に至らず、気管支炎や咽頭炎、副鼻腔炎など軽症で終わることも多いです。ただし、Chlamydophila psittaciによるオウム病では、突然の発症とともに重症化することがあります。後者の診断には鳥類との接触歴が重要であり、疑うときは後方病院に紹介します。

レジオネラ肺炎は、エアロゾルを発生させる人工環境(古いエアコン、非加熱式の加湿器、循環風呂など)との関連が深いとされています。潜伏期間は2~10日間程度で、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などの症状に始まり、乾性咳嗽、悪寒を伴う高熱が出現します。下痢や腹痛などの消化器症状や傾眠などの中枢神経症状がみられるのも特徴です。肺外病変も含めて重篤になることがあり、後方病院に紹介した方が良いです。

咳嗽が長引き、起因菌が同定されにくいという共通点のため、肺結核を異型肺炎と誤診していることは少なくありません。肺結核は湿性咳嗽が多く、異型肺炎は乾性咳嗽が多いです。しかしながら、2週間以上の咳嗽や体重減少を認めるときは肺結核を必ず疑います。

なお、尿中レジオネラ抗原迅速検査は、長らくジェノタイプ1のLegionella pneumophilaしか検出できませんでしたが、すべての血清型(1~15)の検出が可能なキットが発売されています。

マイコプラズマ抗原迅速検査により、発症初期でも検出できるが、感度は60%程度と低く、特異度も90%程度です1)。感度を上げるためには、咽頭後壁を強くこすりつけて採取しますが、あくまで補助診断と割り切るのが良いです。


 
[1] Miyashita N, et al:Diagnostic sensitivity of a rapid antigen test dor the detection of Mycoplasma pneumoniae:Comparison with real‒time PCR. J Infect Chemother 21:473‒475, 2015.

異型肺炎の治療

マイコプラズマ肺炎を疑うときは、ドキシサイクリン(ビブラマイシン錠®)を経口投与する。マクロライド系抗菌薬(ジスロマック錠®など)は、近年になって耐性菌が増加してきているため避けます1)

マイコプラズマ肺炎の治療
ドキシサイクリン(ビブラマイシン錠®)1回100mgを1日2回、7~10日間経口投与する。



クラミドフィラ肺炎を疑うときは、アジスロマイシン(ジスロマック錠®)により治療します。ただし、鳥との接触歴があるなどオウム病を疑うときは、重症化するリスクが高いため後方病院に紹介した方が良いです。

クラミドフィラ肺炎の治療
アジスロマイシン(ジスロマック錠®)1回500mgを1日1回、3日間経口投与する。

1)1)Okada T, Morozumi M, Tajima T, et al. Rapid effectiveness of minocycline or doxycycline against macrolide-resistant Mycoplasma pneumoniae infection in a 2011 outbreak among Japanese children. Clin Infect Dis. 2012 Dec;55(12):1642-9.

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