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2024-10-22肺炎
肺炎の診察のポイント
診察のポイント
細菌性肺炎では、発熱や咳、痰、呼吸数の増加がみられるが、高齢者では、これら典型的な症状を伴わないことも多い。そのため高齢者に急な食事量の低下、意識状態の変化、ADLの低下などを認めるときは、肺炎を含めた感染症のワークアップが求められます。
身体診察では、呼吸音の異常・左右差・ラ音の存在、胸膜摩擦音などを確認します。意識障害、チアノーゼ、SpO2 90%以下、低体温、脱水所見を認めるときは重症であり、後方病院への紹介搬送を検討します。
高齢者の肺炎の多くが、肺炎球菌、インフルエンザ菌によるものです1)。衰弱した高齢者、慢性呼吸器疾患のある患者や抗菌薬治療歴の多い患者では、モラクセラ菌、肺炎桿菌(クレブシエラ)、緑膿菌、あるいはESBL産生菌などの耐性菌によることもあります。また、インフルエンザ罹患後では、肺炎球菌に加えて黄色ブドウ球菌による肺炎を発症する可能性があります。これらの鑑別には、喀痰のグラム染色が有効です。
誤嚥のエピソード、寝たきりの高齢者における肺炎では誤嚥性肺炎を疑う必要があります。
呼吸器症状に加えて、意識変容、頭痛、消化器症状など肺外症状を認めるときは異型肺炎を疑います。呼吸数が正常に近い、呼吸音に左右差があるといったときは無気肺を疑います。
抗菌薬への反応が悪く、左右差のある胸水貯留を認めるときは膿胸を疑います。
2週間以上の咳、痰、発熱、食欲低下、体重減少を認めるときは肺結核を必ず疑います。
身体診察では、呼吸音の異常・左右差・ラ音の存在、胸膜摩擦音などを確認します。意識障害、チアノーゼ、SpO2 90%以下、低体温、脱水所見を認めるときは重症であり、後方病院への紹介搬送を検討します。
高齢者の肺炎の多くが、肺炎球菌、インフルエンザ菌によるものです1)。衰弱した高齢者、慢性呼吸器疾患のある患者や抗菌薬治療歴の多い患者では、モラクセラ菌、肺炎桿菌(クレブシエラ)、緑膿菌、あるいはESBL産生菌などの耐性菌によることもあります。また、インフルエンザ罹患後では、肺炎球菌に加えて黄色ブドウ球菌による肺炎を発症する可能性があります。これらの鑑別には、喀痰のグラム染色が有効です。
誤嚥のエピソード、寝たきりの高齢者における肺炎では誤嚥性肺炎を疑う必要があります。
呼吸器症状に加えて、意識変容、頭痛、消化器症状など肺外症状を認めるときは異型肺炎を疑います。呼吸数が正常に近い、呼吸音に左右差があるといったときは無気肺を疑います。
抗菌薬への反応が悪く、左右差のある胸水貯留を認めるときは膿胸を疑います。
2週間以上の咳、痰、発熱、食欲低下、体重減少を認めるときは肺結核を必ず疑います。
喀痰グラム染色
良質な喀痰が採れたら、グラム染色は有用です。口腔内をすすいだ上で咳をしてもらい、できるだけ唾液を混入させずに痰を採取します。ただし、高齢になると痰の喀出が困難になり、評価に値する喀痰が得られるのは43.1%に過ぎないとする報告もあります2)。意識状態の悪い寝たきり高齢者では、さらに難しくなります。プライマリケアのセッティングにおける喀痰のグラム染色は、細菌性肺炎の診断における補助的なものと考えられます3)。
喀痰中にグラム陽性の双球菌を多量に単独で認め、貪食像も伴っていれば、肺炎球菌性肺炎と診断できます。ただし、長時間放置すると肺炎球菌は自己融解するため、速やかに染色するか、少なくともアルコール固定しておくことが望ましいです。
グラム陰性の小さな短桿菌~球菌を認めるときは、インフルエンザ菌性肺炎を疑います。
また、腎臓の形をしたグラム陰性の双球菌を認めるときは、モラクセラ菌性肺炎を疑います。モラクセラ菌は多数の貪食像を認めることが多いです。いずれも、COPDなど心肺機能に何らかの障害がある高齢者において肺炎の原因となりやすいです。
喀痰中に大型のグラム陰性桿菌を認めるときは、その多くが肺炎桿菌(クレブシエラ)です。小型のグラム陰性桿菌を認めるときは、緑膿菌性肺炎の可能性を疑います。最近の抗菌薬使用があるか、かなり衰弱した状態であることが多く、重症となるリスクが高いと考えます。
一方、喀痰中に多数の白血球を認めるのに、有意な細菌が見当たらないときは、異型肺炎のほかウイルス性肺炎、結核などを想起する必要があります。あるいは、既に抗菌薬が開始されている場合にも、こうした無菌的な膿性痰の所見となることがあります。
抗菌薬投与前の喀痰グラム染色で起因菌が推定できているときは、投与後の治療効果判定にもグラム染色は有用です。喀痰中の菌や白血球数が減少していることは、抗菌薬に感受性があることを示唆しています。
喀痰中にグラム陽性の双球菌を多量に単独で認め、貪食像も伴っていれば、肺炎球菌性肺炎と診断できます。ただし、長時間放置すると肺炎球菌は自己融解するため、速やかに染色するか、少なくともアルコール固定しておくことが望ましいです。
グラム陰性の小さな短桿菌~球菌を認めるときは、インフルエンザ菌性肺炎を疑います。
また、腎臓の形をしたグラム陰性の双球菌を認めるときは、モラクセラ菌性肺炎を疑います。モラクセラ菌は多数の貪食像を認めることが多いです。いずれも、COPDなど心肺機能に何らかの障害がある高齢者において肺炎の原因となりやすいです。
喀痰中に大型のグラム陰性桿菌を認めるときは、その多くが肺炎桿菌(クレブシエラ)です。小型のグラム陰性桿菌を認めるときは、緑膿菌性肺炎の可能性を疑います。最近の抗菌薬使用があるか、かなり衰弱した状態であることが多く、重症となるリスクが高いと考えます。
一方、喀痰中に多数の白血球を認めるのに、有意な細菌が見当たらないときは、異型肺炎のほかウイルス性肺炎、結核などを想起する必要があります。あるいは、既に抗菌薬が開始されている場合にも、こうした無菌的な膿性痰の所見となることがあります。
抗菌薬投与前の喀痰グラム染色で起因菌が推定できているときは、投与後の治療効果判定にもグラム染色は有用です。喀痰中の菌や白血球数が減少していることは、抗菌薬に感受性があることを示唆しています。
喀痰培養
喀痰培養の感度は高いですが、特異度は低い検査です。検体に常在菌が多数混入するなかで、真の起因菌を見極めなければならず、喀痰中の肺炎球菌は時間がたつと自己融解してしまう(培養で生えない)という問題もあります。
つまり、喀痰培養の結果を解釈するためには、あらかじめグラム染色により起因菌を推定しておくことが求められます。グラム染色を行う余裕がない場合は、外来診療において喀痰培養を提出する意義は低いです4)。
つまり、喀痰培養の結果を解釈するためには、あらかじめグラム染色により起因菌を推定しておくことが求められます。グラム染色を行う余裕がない場合は、外来診療において喀痰培養を提出する意義は低いです4)。
参考文献
1)Mark Loeb. Pneumonia in older persons. Clin Infect Dis. 2003 Nov 15;37(10):1335-9.
2)Kothe H, Bauer T, Marre R, et al. Outcome of community-acquired pneumonia: influence of age, residence status and antimicrobial treatment. Eur Respir J. 2008 Jul;32(1):139-46.
3)W W Reed, et al. Sputum gram’s stain in community-acquired pneumococcal pneumonia A meta-analysis, West J Med. 1996 Oct;165(4):197-204.
4)Elisa García-Vázquez, et al. Assessment of the Usefulness of Sputum Culture for Diagnosis of Community-Acquired Pneumonia Using the PORT Predictive Scoring System. Arch Intern Med. 2004 Sep 13;164(16):1807-11.
2)Kothe H, Bauer T, Marre R, et al. Outcome of community-acquired pneumonia: influence of age, residence status and antimicrobial treatment. Eur Respir J. 2008 Jul;32(1):139-46.
3)W W Reed, et al. Sputum gram’s stain in community-acquired pneumococcal pneumonia A meta-analysis, West J Med. 1996 Oct;165(4):197-204.
4)Elisa García-Vázquez, et al. Assessment of the Usefulness of Sputum Culture for Diagnosis of Community-Acquired Pneumonia Using the PORT Predictive Scoring System. Arch Intern Med. 2004 Sep 13;164(16):1807-11.
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