薬剤耐性対策(AMR)
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2024-10-22薬剤耐性が起こり拡大する3つの要因
薬剤耐性が起こり拡大する3つの要因
耐性菌にはどんなものがあるのか?
問題となる耐性菌として、院内感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクター、大腸菌や肺炎桿菌を中心に基質拡張型ベータラクタマーゼ(ESBL:Extended-spectrum beta-Lactamase)産生菌、カルバペネム耐性緑膿菌、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE:Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae)が出現し、市中では、耐性肺炎球菌、耐性インフルエンザ菌、市中型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、キノロン耐性大腸菌、アジスロマイシン耐性淋菌などがあります。
薬剤耐性が起こり拡大する3つの要因
抗菌薬が選択圧として働くことによって感受性菌が減少し、耐性菌が相対的に増加することによって薬剤耐性菌は増殖します。
要因1:広域抗菌薬の安易な使用
この状況の要因のひとつは、広域抗菌薬の投与です。負荷をかけなくてもよい常在菌/非病原菌が抗菌薬の影響を受け、耐性誘導されたり、選択的に耐性菌が残ってしまうことになります。例えば、溶連菌感染症に対して、症状がひどそうだからといって、溶連菌に感受性が100%あるアモキシシリンよりも結核や緑膿菌、大腸菌など他の細菌まで広くカバーしているフルオロキノロンを処方するなどです。
要因2:抗菌薬の量/期間の不適切な使用
薬剤耐性菌は、多少耐性であっても高い濃度の抗菌薬に曝露されれば増殖抑制できることが多いのですが、使用される量や期間が少ないと薬剤耐性菌だけが増殖できる環境をつくってしまうことになり、また、多過ぎる/長過ぎることによる副作用や合併症の増加、菌交代現象による耐性菌誘導などのリスク増加にもつながります。そのため細菌が中途半端な抗菌薬にさらされるのを避けるため、適切な投与量/投与期間の抗菌薬投与が重要となります。慣習的な炎症反応マーカーであるCRPでは判断するのではなく、疾患ごとに必要な投与日数があり、身体所見と合わせて総合的に判断する必要性があります。
要因3:不要な症例に対する抗菌薬の使用
一般的に風邪症候群とは、ウイルスが鼻やのどにくっついて炎症を起こし、鼻炎/咽頭痛/咳/発熱などの様々な症状のでるウイルス性上気道炎のことをいいます。この風邪の症状はいずれも、身体がウイルスと戦っているサインです。風邪を治すのは個々の免疫力であり、薬ではありません。残念ながら対症療法薬、いわゆる風邪薬のほとんども症状を軽減する効果も期待できません。
抗菌薬は、細菌と戦う薬です。抗菌薬はウイルスには効きませんし、細菌感染の予防効果にもならず、風邪症候群をはじめとしたウイルス感染症への抗菌薬投与は、メリットはなく、デメリットしかありません。
インフルエンザやCOVID-19もウイルス性感染症ですので、乳児や高齢者、基礎疾患のあるような免疫力の低下している患者に対して、抗ウイルス薬投与を検討することができますが、一般的な風邪症候群と同様、抗菌薬の投与は、入院率/重症率/死亡率を下げることはできませんし、症状を軽減する効果や細菌感染の予防効果もありません。
また、抗菌薬には消化器症状やアレルギーなどの副作用もあります。必要のない抗菌薬に無駄に限りある医療費を使い、さらにその処方により副作用の発症するリスク、耐性菌をつくってしまうリスクなどは避けなければなりません。炎症反応マーカーであるCRP/WBCでは、ウイルスや細菌感染症かの判断はできないとされます。その風邪症状が、抗菌薬が必要な疾患かどうかなどを根拠に基づいた詳細な問診や身体所見により総合的に見極めるのが外来診療に関わる医師の仕事となります。体表感染症である上気道細菌感染症(中耳炎/鼻副鼻腔炎/咽頭扁桃炎/気管支炎)のほとんどが抗菌薬なしで治癒するため、抗菌薬処方Phaseを見極めることが重要となります12)。「抗菌薬が不要な症例には、抗菌薬を処方しない。」この当たり前のことをしっかり根拠をもって実践していくことが大事なのです。
抗菌薬は、細菌と戦う薬です。抗菌薬はウイルスには効きませんし、細菌感染の予防効果にもならず、風邪症候群をはじめとしたウイルス感染症への抗菌薬投与は、メリットはなく、デメリットしかありません。
インフルエンザやCOVID-19もウイルス性感染症ですので、乳児や高齢者、基礎疾患のあるような免疫力の低下している患者に対して、抗ウイルス薬投与を検討することができますが、一般的な風邪症候群と同様、抗菌薬の投与は、入院率/重症率/死亡率を下げることはできませんし、症状を軽減する効果や細菌感染の予防効果もありません。
また、抗菌薬には消化器症状やアレルギーなどの副作用もあります。必要のない抗菌薬に無駄に限りある医療費を使い、さらにその処方により副作用の発症するリスク、耐性菌をつくってしまうリスクなどは避けなければなりません。炎症反応マーカーであるCRP/WBCでは、ウイルスや細菌感染症かの判断はできないとされます。その風邪症状が、抗菌薬が必要な疾患かどうかなどを根拠に基づいた詳細な問診や身体所見により総合的に見極めるのが外来診療に関わる医師の仕事となります。体表感染症である上気道細菌感染症(中耳炎/鼻副鼻腔炎/咽頭扁桃炎/気管支炎)のほとんどが抗菌薬なしで治癒するため、抗菌薬処方Phaseを見極めることが重要となります12)。「抗菌薬が不要な症例には、抗菌薬を処方しない。」この当たり前のことをしっかり根拠をもって実践していくことが大事なのです。
参考文献
12)永田 理希著、Phaseで見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた.日本医事新報社,2021.
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