感染症予防と対策

2024-09-03外来・診療所 高齢者施設・障がい者施設

感染症予防と対策:外来診療所、高齢者施設

感染症対策3つの原則

感染症はその環境によって、感染の広がり方が大きく異なる。

感染対策として重要なのは、1)標準予防策の徹底、2)ワクチン接種、3)危機管理体制の構築、である。施設の感染対策委員会などが中心となって感染症対策について利用者と職員に周知し、実践できるようにする。

「標準予防策」とは、病原体の有無に関わらず、すべての人が感染症をもっているかもしれないという前提にたって感染対策を行う、という考え方である。具体的には、患者または患者の周囲の環境に触れる前後の手指衛生を徹底し(参照:WHO手指衛生5つのタイミング ※)、血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、損傷した皮膚、粘膜等の湿性生体物質に触れるときには手袋を使用する。またすべての医療関係者は、職業上曝露による感染を防ぐためにワクチン接種が推奨される。具体的には、B型肝炎(主に血液感染)、麻疹・水痘(空気感染)、風疹・おたふく・インフルエンザ・COVID-19・髄膜炎菌(飛沫感染、エアロゾル感染)などである。どのワクチンを実施するかは、環境感染学会のガイドライン(※)を参照し、感染機会や費用などを考慮して検討する。また感染症対策委員会を設置し、業務継続計画(BCP)を策定する。こういった危機管理体制の構築により、緊急時への即応力を高め、また必要なサービスを継続することができる。

外来、診療所の感染症対策

外来・診療所では、入院診療と比べて、短期間により多くの患者が出入りする。そのため滞在時間は短いものの接触機会は多い。なるべく換気のよい環境を保つ。とくに空気感染しうる結核・麻疹・水痘を疑う患者は、個室隔離が望ましい。問診で「発熱・皮疹」に当てはまる患者があれば、早めに個室に案内する体制を作る。くれぐれも待合室で長く滞在しないようにしたい。

高齢者施設の感染症対策

高齢者施設では、施設内流行が起こりやすい。なぜなら、高齢だったり基礎疾患を持つ人たちは免疫が低下していることが多く、また認知症を持つ人たちは感染対策の協力を得られにくいためである。認知症高齢者施設では感染症対策委員会の設置が義務付けられている。「介護現場における感染対策の手引き」(※)などを参考に、日頃から話し合っておく。特にインフルエンザ、COVID-19などの施設内流行を起こしやすい疾患は、ワクチン接種をしておくことが望ましい。入所時健診(共通診断書)における感染症スクリーニングは、法的裏付けはない。結核、疥癬などは伝播性も高く、特に重視して確認するとよいだろう。一方でHIV、梅毒などは有病率、感染性の面から、スクリーニング検査は推奨しない。

参考サイト・文献

1)手指衛生 l AMRの院内感染対策「私たちができること」、AMR臨床リファレンスセンター
https://amr.ncgm.go.jp/medics/2-5-2-1.html

2)環境感染学会、医療関係者のためのワクチンガイドライン第3版
http://www.kankyokansen.org/modules/publication/index.php?content_id=17

3)介護現場における感染対策の手引き、厚生労働省老健局
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001149870.pdf

4)高齢者施設・障害者施設向け感染症対策ガイドブック、東京都保健医療局感染症対策部
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/kansenshoguidebook.files/20240201zentaiver.pdf

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