疾患別(プライマリ・ケア医が診る感染症)

2024-09-03動物咬傷感染症 (イヌ・ネコ・ヒト)

動物咬傷感染症(イヌ・ネコ・ヒト咬傷)

咬傷の病原体

いずれの咬傷も混合感染が多いです。

想定される起因菌(下線は特に重要な病原体)
・全ての咬傷: Staphylococcus aureus、嫌気性菌、Streptococcus spp. etc.
・イヌ:Pasteurella spp. Capnocytophaga caninorsus, Rabies virus  etc.
・ネコ:Pasteurella spp. etc.
・ヒト: Staphylococcus aureus、Streptococcus anginosus, Eikenella corrondens,E.nucleatum 等.

臨床の特徴

・イヌ咬傷: 咬む力が強く、組織のダメージが大きかったり、組織自体がかみ切られてしまうこともあります。国内では狂犬病の危険はないといわれていますが、海外の狂犬病のリスクのある国で咬まれた場合は狂犬病予防ワクチンでの迅速な対応が必要です。 

・ネコ咬傷:犬よりも感染の危険が大きく、重症化しやすいといわれてます。これは猫の口腔内に雑菌が多く、牙や爪が鋭いため、刺入口が小さくても、傷が深く、骨髄炎や関節炎に及ぶことが多いためです。症状経過が早いため、半日程度ですでに感染が成立していることもあります。
また、猫ひっかき病では、10日後くらいから微熱、全身倦怠、関節痛、吐き気等の症状が出ます。

 ・全ての咬傷:物理的な変形や粉砕骨折などを伴う場合は、外科医にコンサルテーションします。

治療

・創部の洗浄とデブリードメントが非常に重要です。
・一次縫合は予後を悪くする要因となりうるため、避けます。
・臨床的に明らかな感染兆候が認められない場合:3−5日間の予防的抗菌薬投与
・すでに感染が成立している場合:最低でも10日間の抗菌薬投与
(骨髄炎・関節炎の場合は、それぞれの治療期間に準じる)

・使用する抗菌薬 (1)参照):
 経口:
      ①アモキシシリン250mg +オーグメンチン(アモキシシリン/クラブラン酸)250mg 1日3回
   ②(ドキシサイクリン 100mg を1日2回 または ST合剤2錠を1日2回)
 +(メトロニダゾール500mgを1日3回 または クリンダマイシン300mgを1日3回)

プライマリケアにおけるポイント

1)狂犬病予防の対応:イヌ咬傷(特に海外)の場合に検討が必要です。
  →出血の有無と、受傷前に狂犬病ワクチン接種歴(暴露前接種)がある場合とない場合で、狂犬病ワクチンの接種回数が異なる(参考サイト3、4参照)。
  具体的な対応については専門医(感染症科医)やトラベルクリニックへコンサルトする。

2)破傷風予防の対応:創部の汚染度や破傷風トキソイドの予防接種歴により検討が必要です。
→破傷風トキソイドは接種歴が3回未満または不明の場合は、3回接種を行います。
3回の接種歴がある場合は、最終接種からの経過年数で1回接種を行う。
また、破傷風を起こす可能性が高い創で、かつ、破傷風トキソイド接種歴が3回未満または不明の場合は、抗破傷風ヒト免疫グロブリン250単位も併せて投与する(参考サイト5参照)。

参考サイト・文献

1) 咬傷・外傷後の抗菌薬投与 感染症ガイドライン 亀田総合病院
      https://medical.kameda.com/general/medical/assets/17.pdf

2) レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版 青木眞 医学書院

3) WHO Expert Consultation on Rabies thrid report 2018  (p57〜77 特にp67 table9)
https://www.who.int/publications/i/item/WHO-TRS-1012

4) 狂犬病ワクチン こどもとおとなのワクチンサイト
https://www.vaccine4all.jp/news-detail.php?npage=2&nid=136

5) 外傷後の破傷風予防のための破傷風トキソイドワクチンおよび抗破傷風ヒト免疫グロブリン投与と破傷風の治療 IASR
http://idsc.nih.go.jp/iasr/23/263/dj2632.html

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