疾患別(プライマリ・ケア医が診る感染症)

2024-09-03こどもとおとなの 細菌性上気道炎

急性気管支炎

急性気管支炎とは?

聴診上、副雑音があるが、呼吸状態や胸部画像所見などから肺炎が除外されたものをさすことが多く、その原因微生物は、ウイルスが 90%以上を占め、5~10%は百日咳菌、マイコプラズマとされ1)、その多くは自然治癒します。診断のためのこれらの微生物ルーチン検査は不要ですが、流行状況や身体所見から臨床的にマイコプラズマ肺炎や百日咳が疑われる場合は除外診断のための検査を検討します。
 マイコプラズマ感染症のほとんどは軽症で治癒し、肺炎となるのは感染者の約3~5%、5歳未満では稀、最も多い学童期で10%しかない2)とされます。ゆえに、なんでもかんでもマイコプラズマ疑い、マイコプラズマだからマクロライド系抗菌薬投与とするのはメリットよりもデメリットが勝ります。

治療

百日咳を診断した場合は、マクロライド系抗菌薬を投与することが推奨されますが、上記のように肺炎でないマイコプラズマによる急性気管支炎の場合には、抗菌薬の有用性は確立されていません3)。つまり、百日咳以外の急性気管支炎に対して抗菌薬は原則として不要とされます4)。また、気管支拡張薬は無効5)なため、安易な経口/貼付剤の多剤処方はデメリットが勝ることになります。

急性細気管支炎(2歳未満の小児)とは?

2歳未満の小児の鼻汁、鼻閉、咳、呼気性喘鳴や努力呼吸を呈するウイルスよる気道感染症であり、発熱の有無を問わないとされています。細気管支上皮の炎症/浮腫や粘液による閉塞性病変に伴い呼吸障害をきたしうる疾患であり、その原因微生物として RS ウイルスが最も多く、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスもあります。
RS ウイルス初感染者の約40%は下気道感染症をきたすため、乳児における入院の原因として最も多く、多呼吸、呼気性喘鳴や努力呼吸、低酸素血症等重症化のサインに注意し、適宜、呼吸管理目的に2次医療機関への入院紹介を検討します。乳児期早期や基礎疾患のある乳児にはハイリスクとなりますので、より注意が必要となります。

治療(急性細気管支炎)

抗菌薬の効果は期待できない6)のはもちろんのこと、気管支拡張薬やステロイドを用いた薬物療法の有効性は否定され、各種ガイドラインでも推奨されておらず7)安易な多剤処方はしてはいけないとされています。治療としては、呼吸・全身状態に応じた全身管理が重要となります。

急性気管支炎の重要な鑑別疾患

急性期~亜急性期の症状であれば、肺炎、膿胸、気道~気管支異物、気管支喘息を除外することが重要となり、発熱が持続したり、呼吸障害のある症例において、バイタルサインや胸部診察所見を見極めたうえでの追加検査が考慮されます。また、経過次第では、結核や肺がんなども疑うことも必要になります。

参考サイト・文献

1) Qaseem A, et al. Ann Intern Med. 2022 Mar;175(3):399-415.

2) Kimberlin MD, et al :Red Book: 2015 Report of the Committee on Infectious Diseases. American Academy of Pediatrics, 2015.

3)  Gardiner SJ,et al. Cochrane Database Syst Rev. Jan 08 2015;1:Cd004875.

4)  Gonzales R, et al. JAMA internal medicine. Feb 25 2013;173(4):267-273.

5)  Becker LA. et al. Cochrane Database Syst Rev. Sep 03,2015(9):Cd001726.

6)  Farley R,et al. Cochrane Database Syst Rev. Oct 09 2014(10):Cd005189.

7)  Ralston SL, et al. Pediatrics. Nov 2014; 134(5):e1474-1502.

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