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2024-09-03こどもとおとなの 細菌性上気道炎
急性咽頭(扁桃)炎
急性咽頭(扁桃)炎とは?
口腔内所見で口腔粘膜発赤みられるもので最も頻度の高いのは、急性咽頭炎であり、成人の急性咽頭炎の90%がウイルス性、10%未満が細菌性、小児の急性咽頭炎の70~85%がウイルス性、15~30%が細菌性とされます1)~4)。ウイルス性の中で最も多いとされるのはライノウイルスですが、COVID-19流行期においては、この原因であるSARS-CoV-2も鑑別に必要となります。抗菌薬が適応となる細菌性の中で最も多いのがA群β溶連菌(GAS)であり1)~4)、その見極めが重要となります。これは迅速抗原定性検査キットで5分と短時間で感度&特異度ともおよそ90%と精度の高い検査5)で評価ができますので、症状や所見から疑った場合には、これを実施します。ただ、成人では5%、学童では15%、乳幼児では20%以上にA群β溶連菌を保菌6)としているため、症状や所見の見極めなしに発熱ルーチン検査では、保菌を拾っているだけで不要な抗菌薬を処方することになり、COVID-19を含めた他の疾患を見逃すことにもなります。
A群β溶連菌性咽頭炎の可能性を見立てる方法には、modified centor criteriaスコア、これよりもやや精度が高いとされるFever PAINスコアがあります。しかし、それらのスコアのみで抗菌薬投与を決めてしまうと,modified centor criteriaスコアでは約50%、Fever PAINスコアでは約40%が過剰投与になってしまいます7)。臨床的には、これらのスコアや所見などで「溶連菌らしさ」が高いと判断した場合に、中咽頭検体よりA群β溶連菌迅速検査キットを用いることで見極めることが可能となります。
採血の炎症反応の数値(WBCやCRPなど)では、ウイルスや細菌を見極めることはできないため、抗菌薬処方基準にはできません。基本は、詳細な問診と身体所見であり、「溶連菌らしさ」として、持続悪化する強い痛みを伴い、軟口蓋点状出血/火焔状紅斑などの粘膜下出血/口蓋垂発赤/口蓋扁桃·咽頭後壁の発赤・栓子などがみられたり、前頸部リンパ節を少し押すだけで非常に痛がるなどがあれば可能性は高いと判断し、迅速検査を実施します。
咽頭痛の訴えが片側性であり、扁桃周囲の発赤膨隆がみられれば、細菌性が強く疑われ、迅速検査陰性であっても症状が強い場合には、Fusobacterium necrophorumなどの嫌気性菌による可能性があるため、抗菌薬処方を検討します。また、14歳未満の小児では,Fusobacterium necrophorum は、1.9%と非常に少ないとされます8)。
また、経過で鼻炎や咳があれば、細菌性である可能性はかなり下がり9)、SARS-CoV-2を含め、ウイルス性咽頭扁桃炎の可能性が上がることになります。つまり、受診時(点)のその局所所見と全身所見をそれまでやその後の経過の時間軸(線)を含めて、総合的に見極める必要があります。
A群β溶連菌性咽頭炎の可能性を見立てる方法には、modified centor criteriaスコア、これよりもやや精度が高いとされるFever PAINスコアがあります。しかし、それらのスコアのみで抗菌薬投与を決めてしまうと,modified centor criteriaスコアでは約50%、Fever PAINスコアでは約40%が過剰投与になってしまいます7)。臨床的には、これらのスコアや所見などで「溶連菌らしさ」が高いと判断した場合に、中咽頭検体よりA群β溶連菌迅速検査キットを用いることで見極めることが可能となります。
採血の炎症反応の数値(WBCやCRPなど)では、ウイルスや細菌を見極めることはできないため、抗菌薬処方基準にはできません。基本は、詳細な問診と身体所見であり、「溶連菌らしさ」として、持続悪化する強い痛みを伴い、軟口蓋点状出血/火焔状紅斑などの粘膜下出血/口蓋垂発赤/口蓋扁桃·咽頭後壁の発赤・栓子などがみられたり、前頸部リンパ節を少し押すだけで非常に痛がるなどがあれば可能性は高いと判断し、迅速検査を実施します。
咽頭痛の訴えが片側性であり、扁桃周囲の発赤膨隆がみられれば、細菌性が強く疑われ、迅速検査陰性であっても症状が強い場合には、Fusobacterium necrophorumなどの嫌気性菌による可能性があるため、抗菌薬処方を検討します。また、14歳未満の小児では,Fusobacterium necrophorum は、1.9%と非常に少ないとされます8)。
また、経過で鼻炎や咳があれば、細菌性である可能性はかなり下がり9)、SARS-CoV-2を含め、ウイルス性咽頭扁桃炎の可能性が上がることになります。つまり、受診時(点)のその局所所見と全身所見をそれまでやその後の経過の時間軸(線)を含めて、総合的に見極める必要があります。
治療
【抗菌薬処方Phase:成人GAS咽頭扁桃炎】
アモキシシリン1回500㎎(250mg2錠)、1日3回内服、7日間(最長10日間)
アモキシシリン 1 回 1,000 mg(250mg4錠)1日1回内服、10日間
アモキシシリン1回 500mg(250mg2錠)1日2回,10日間
ペニシリンアレルギー(軽症)あり:
セファレキシン1回500㎎(250㎎2錠)、1日3回内服、10日間
ペニシリンアレルギー(重症)あり:
クリンダマイシン1回300㎎(250㎎2錠)、1日3回内服、10日間
(クリンダマイシンは、耐性率に注意する)
【抗菌薬処方Phase:小児GAS咽頭扁桃炎】
アモキシシリン60mg/kg/日、分3、7日間(最長10日間)(最大 1,000mg/日)
アモキシシリン 30~50mg/kg/日、分2~3、10日間(最大 1,000mg/日)
ベンジルペニシリンベンザチン 5 万単位/kg/日、分3~4、10日間(最大 160 万単位/日)
ペニシリンアレルギー(軽症)あり:
セファレキシン50mg/kg/日,分2(最大1,000mg),10日間
(L-ケフレックス®小児用顆粒:ヒート製剤)
ペニシリンアレルギー(重症)あり:
クリンダマイシン20mg/kg/日(最大 900mg/日)分3、10日間
(クリンダマイシンは、耐性率に注意する、日本では脱カプセルとする必要あり)
検査は、詳細な問診と身体所見(局所/全身)を行い、そのうえで検査前確率が高い場合にのみ必要な検査を行うのが診療の基本となる。コロナ禍において、検査をするのが診療とする間違った医療行為をしてしまうことが加速されている印象がある。「検査すること」と「診察をする(疾患を見極める)」はイコールではない。コロナ禍においてこそ、基本に立ち返る必要がある。「症状がひどい、炎症反応が正常値より高い」=「抗菌薬処方」でもないということはいうまでもない。
アモキシシリン1回500㎎(250mg2錠)、1日3回内服、7日間(最長10日間)
アモキシシリン 1 回 1,000 mg(250mg4錠)1日1回内服、10日間
アモキシシリン1回 500mg(250mg2錠)1日2回,10日間
ペニシリンアレルギー(軽症)あり:
セファレキシン1回500㎎(250㎎2錠)、1日3回内服、10日間
ペニシリンアレルギー(重症)あり:
クリンダマイシン1回300㎎(250㎎2錠)、1日3回内服、10日間
(クリンダマイシンは、耐性率に注意する)
【抗菌薬処方Phase:小児GAS咽頭扁桃炎】
アモキシシリン60mg/kg/日、分3、7日間(最長10日間)(最大 1,000mg/日)
アモキシシリン 30~50mg/kg/日、分2~3、10日間(最大 1,000mg/日)
ベンジルペニシリンベンザチン 5 万単位/kg/日、分3~4、10日間(最大 160 万単位/日)
ペニシリンアレルギー(軽症)あり:
セファレキシン50mg/kg/日,分2(最大1,000mg),10日間
(L-ケフレックス®小児用顆粒:ヒート製剤)
ペニシリンアレルギー(重症)あり:
クリンダマイシン20mg/kg/日(最大 900mg/日)分3、10日間
(クリンダマイシンは、耐性率に注意する、日本では脱カプセルとする必要あり)
検査は、詳細な問診と身体所見(局所/全身)を行い、そのうえで検査前確率が高い場合にのみ必要な検査を行うのが診療の基本となる。コロナ禍において、検査をするのが診療とする間違った医療行為をしてしまうことが加速されている印象がある。「検査すること」と「診察をする(疾患を見極める)」はイコールではない。コロナ禍においてこそ、基本に立ち返る必要がある。「症状がひどい、炎症反応が正常値より高い」=「抗菌薬処方」でもないということはいうまでもない。
乳幼児(3歳未満)のGASにより急性咽頭扁桃炎に抗菌薬が必要か?
3歳未満では「細菌感染⇔1臓器,ウイルス感染⇔全身症状」という基本原則から外れ,鼻炎や咳を伴ったり,発熱を伴う腹痛で受診したり,全身の細かい点状発疹で受診することも多く,典型的な症状は呈さないため,臨床診断はなかなか難しくなります10)。
しかし、3歳未満では、そもそもGASによる咽頭扁桃炎も罹患率も低く、リウマチ熱発症が非常に少なく,扁桃周囲膿瘍などの重症化することもきたしにくいため,治療の必要性は低いとされます11)12)。そのため、機嫌が悪く明らかな周囲の流行や曝露歴がない限りは,迅速検査をする臨床的意義は乏しいことになります。
しかし、3歳未満では、そもそもGASによる咽頭扁桃炎も罹患率も低く、リウマチ熱発症が非常に少なく,扁桃周囲膿瘍などの重症化することもきたしにくいため,治療の必要性は低いとされます11)12)。そのため、機嫌が悪く明らかな周囲の流行や曝露歴がない限りは,迅速検査をする臨床的意義は乏しいことになります。
緊急性の高い咽頭痛/咽頭炎
咽頭痛を訴える病気の中には、COVID-19や急性伝染性単核球症、性病(淋菌、クラミジアなど)以外に急性喉頭蓋炎、深頸部膿瘍(扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、Ludwig アンギーナ等)、Lemierre 症候群などの生命に関わる病気があります。
次第に悪化していく咽頭痛や非常に強い喉の痛み、開口障害、唾液を飲み込めない(流涎)、Tripod Position(三脚のような姿勢)、吸気性喘鳴(Stridor)といった Red Flag症状があった場合には、これらの疾患を疑う必要があります。また、嚥下痛が乏しく、咽頭や扁桃の炎症所見を伴っていないにもかかわらず咽頭痛を訴える場合は、頸部への放散痛としての「咽頭痛の訴え」の可能性があり、急性心筋梗塞、くも膜下出血、頸動脈解離、椎骨動脈解離等を疑う必要があり、適宜、後方支援病院への紹介のタイミングを見逃さないようにしなければなりません。
次第に悪化していく咽頭痛や非常に強い喉の痛み、開口障害、唾液を飲み込めない(流涎)、Tripod Position(三脚のような姿勢)、吸気性喘鳴(Stridor)といった Red Flag症状があった場合には、これらの疾患を疑う必要があります。また、嚥下痛が乏しく、咽頭や扁桃の炎症所見を伴っていないにもかかわらず咽頭痛を訴える場合は、頸部への放散痛としての「咽頭痛の訴え」の可能性があり、急性心筋梗塞、くも膜下出血、頸動脈解離、椎骨動脈解離等を疑う必要があり、適宜、後方支援病院への紹介のタイミングを見逃さないようにしなければなりません。
参考サイト・文献
1) McMillan JA, et al :J Pediatr. 1986; 109(5) : 747-52.
2) Esposito S, et al :J Med Microbiol. 2004; 53(Pt 7) : 645-51.
3) Evans AS, et al :JAMA. 1964; 190: 699-708.
4) Bisno AL:N Engl J Med. 2001; 344(3) : 205-11.
5) Cohen JF, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2016; 7(7)
6) ESCMID Sore Throat Guideline Group, et al. Clin Microbiol Infect. 2012 Apr;18 Suppl 1:1-28.
7) NICE guideline.
[https://www.nice.org.uk/guidance/ng84/resources/sore-throat-acute-antimicrobial-prescribing-pdf-1837694694085]
8) Van TT, et al : J Clin Microbiol. 2017; 55(4) : 1147-53.
9)Shaikh N, et al:J Pediatr. 2012; 160(3): 487-93.e3.
10) Roggen I, et al :BMJ Open. 2013; 3(4). pii :e002712.
11) Canter B, et al :Pediatrics. 2004; 114(1) : 329-30.
12) Herzon FS:Laryngoscope. 1995; 105(8 Pt 3 Suppl 74) : 1-17.
2) Esposito S, et al :J Med Microbiol. 2004; 53(Pt 7) : 645-51.
3) Evans AS, et al :JAMA. 1964; 190: 699-708.
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5) Cohen JF, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2016; 7(7)
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8) Van TT, et al : J Clin Microbiol. 2017; 55(4) : 1147-53.
9)Shaikh N, et al:J Pediatr. 2012; 160(3): 487-93.e3.
10) Roggen I, et al :BMJ Open. 2013; 3(4). pii :e002712.
11) Canter B, et al :Pediatrics. 2004; 114(1) : 329-30.
12) Herzon FS:Laryngoscope. 1995; 105(8 Pt 3 Suppl 74) : 1-17.
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