疾患別(プライマリ・ケア医が診る感染症)
2024-11-18こどもとおとなの 細菌性上気道炎
急性中耳炎
急性中耳炎とは?
急性中耳炎とは、「耳痛・発熱・耳漏を伴うことがある急性に発症した中耳の感染症1)であり、鼓膜の発赤のみで中耳貯留液を伴わないものは急性中耳炎とはしない2)」と定義し、一般的に急性中耳炎は、鼻咽腔に侵入、定着、増殖したウイルスや細菌が耳管経由で中耳腔に侵入・増殖することで発症し、鼻汁、咳、発熱などの上気道感染症、いわゆる風邪症候群の合併症の1つと考えられ、80%以上が小児中耳炎であり、成人中耳炎は20%未満程度といわれています。
成人中耳炎の場合には、慢性中耳炎(真珠腫性中耳炎)の急性増悪、二次性耳管狭窄による発症や
悪性腫瘍の関連, 自己免疫性疾患、好酸球性中耳炎、ANCA関連血管炎による中耳炎が挙げられ、特殊性が強いため、耳鼻咽喉科専門医への紹介を適切に行うことがベストでしょう。
ここでは、プライマリケア医での対応することもある耳痛、発熱、耳漏を伴う小児急性中耳炎について解説します。
成人中耳炎の場合には、慢性中耳炎(真珠腫性中耳炎)の急性増悪、二次性耳管狭窄による発症や
悪性腫瘍の関連, 自己免疫性疾患、好酸球性中耳炎、ANCA関連血管炎による中耳炎が挙げられ、特殊性が強いため、耳鼻咽喉科専門医への紹介を適切に行うことがベストでしょう。
ここでは、プライマリケア医での対応することもある耳痛、発熱、耳漏を伴う小児急性中耳炎について解説します。
好発起炎菌
主となる原因菌は、急性鼻副鼻腔炎や急性肺炎と同様に肺炎球菌とインフルエンザ菌が2大起炎菌となります。高率に肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、A群溶連菌の混合感染がみられ3),耳漏のある急性中耳炎の92%には細菌が関与しているとされ、病原性が高いのは肺炎球菌となるため、抗菌薬処方とする際には肺炎球菌をターゲットとした抗菌薬の選択を必ず行う必要があります。
しかし,急性中耳炎は、急性鼻副鼻腔炎と同様に体表に近い解剖となる感染症のため、細菌が関与していることと,急性中耳炎の治療に抗菌薬が必要であることは別問題であり,そもそもウイルスか,細菌か,混合か,ということで抗菌薬の必要性の有無を考えることは意味がありません。つまり、耳漏培養やグラム染色で肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌が検出されることと治療に抗菌薬が必要であるということは一致しません。
実臨床において、急性中耳炎のほとんどは自然治癒し,抗菌薬処方が必要とされることは非常に少ない4)~7)とされます 。そのため、受診時(点)の局所所見と全身所見を時間軸(線)を含めて、【抗菌薬処方Phase】を見極める必要があります。
しかし,急性中耳炎は、急性鼻副鼻腔炎と同様に体表に近い解剖となる感染症のため、細菌が関与していることと,急性中耳炎の治療に抗菌薬が必要であることは別問題であり,そもそもウイルスか,細菌か,混合か,ということで抗菌薬の必要性の有無を考えることは意味がありません。つまり、耳漏培養やグラム染色で肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌が検出されることと治療に抗菌薬が必要であるということは一致しません。
実臨床において、急性中耳炎のほとんどは自然治癒し,抗菌薬処方が必要とされることは非常に少ない4)~7)とされます 。そのため、受診時(点)の局所所見と全身所見を時間軸(線)を含めて、【抗菌薬処方Phase】を見極める必要があります。
小児急性中耳炎の抗菌薬処方(Phaseを見極める)
米国のガイドライン8)では、抗菌薬投与を①2歳未満、②重症(全身状態不良,48時間以上持続する耳痛,39℃以上の発熱)、③両側中耳炎、④耳漏を伴うもの、としています。
しかし、世界的にみても医療機関を受診しやすい環境の日本では、この基準では抗菌薬投与が多すぎることになります。特に2歳未満はほぼ全例で抗菌薬投与となってしまいます。
無治療の小児急性中耳炎の自然経過を追ったRoverらのRCTメタ分析結果9)をみると3日で40~60%、6日で70~80%で自然治癒するとしており、これらを加味したうえで抗菌薬処方Phaseシート(図1/図2)で対応するのがベストを考えます10)。
しかし、世界的にみても医療機関を受診しやすい環境の日本では、この基準では抗菌薬投与が多すぎることになります。特に2歳未満はほぼ全例で抗菌薬投与となってしまいます。
無治療の小児急性中耳炎の自然経過を追ったRoverらのRCTメタ分析結果9)をみると3日で40~60%、6日で70~80%で自然治癒するとしており、これらを加味したうえで抗菌薬処方Phaseシート(図1/図2)で対応するのがベストを考えます10)。
図1:
図2:
治療
【小児:抗菌薬処方Phase】
一次治療:
アモキシシリン60mg/kg/日 1日3回内服,5~7日間(最長10日間)
アモキシシリン90mg/kg/日 1日2回内服,5~7日間(最長10日間)
一次治療不応例:
アモキシシリン90mg/kg/日 1日3回内服,5~7日間(最長10日間)
アモキシシリン/クラブラン酸96.4mg/kg/日 1日2回内服,5~7日間(最長10日間)
β-ラクタム系抗菌薬アレルギーあり:
耐性菌非想定:
ST合剤(トリメトプリムとして)10mg/kg/日1日2回
耐性菌想定:
キノロン系抗菌薬(レボフロキサシンなど)
*国内で唯一小児適応のあるトスフロキサシン耐性化しやすく、臨床効果は怪しいため安易には使用しない。
日本では小児適応はないがレボフロキサシンも考慮。
5歳未満:レボフロキサシン20mg/kg/日,1日2回。
5歳以上:レボフロキサシン10mg/kg/日,1日1回。
*第3世代経口セフェム系抗菌薬であるセフジトレン・ピボキシルは倍量であれば理論上、BLNARに効果が期待できる可能性がありますが、カルニチン欠乏症のリスクが乳幼児や高齢者での処方には高いためメリットがデメリットより勝る場合にのみ選択肢に入れる程度で考えます。
*キノロン系抗菌薬は、あくまで超高度耐性菌などの場合など、「それ以外の選択肢がないため仕方なく処方する薬剤」であり、症状がひどいからという理由のみで処方してはいけません。QT延長症候群や末梢神経障害、錯乱、せん妄、幻覚等の精神症状、50歳以上の方のアキレス腱炎や断裂、重症筋無力症の悪化、大動脈瘤・大動脈解離などのリスク、Marfan症候群やEhlers-Danlos症候群などの大動脈瘤などを起こしやすい小児に対するリスクなど、重大なリスクを伴う抗菌薬でもあるため、2016年5月米国FDA(食品医薬品局)でも急性鼻副鼻腔炎や急性気管支炎、単純性尿路感染症には、他選択肢がある場合は処方するべきでないとしています。
*国内の肺炎球菌は、スムース型肺炎球菌(乳幼児に多い)では、ST合剤やドキシサイクリンに耐性菌が多く、重症例には選択してはいけません。ムコイド型肺炎球菌(成人に多い)では、病原性は強いが耐性菌であることは少ないため、選択肢になり得ます。
*経口抗菌薬での選択肢が難しい場合には、セフトリアキソン点滴静注であれば、肺炎球菌・インフルエンザ菌ともに耐性菌をもカバーしているため、対応可能となります。
一次治療:
アモキシシリン60mg/kg/日 1日3回内服,5~7日間(最長10日間)
アモキシシリン90mg/kg/日 1日2回内服,5~7日間(最長10日間)
一次治療不応例:
アモキシシリン90mg/kg/日 1日3回内服,5~7日間(最長10日間)
アモキシシリン/クラブラン酸96.4mg/kg/日 1日2回内服,5~7日間(最長10日間)
β-ラクタム系抗菌薬アレルギーあり:
耐性菌非想定:
ST合剤(トリメトプリムとして)10mg/kg/日1日2回
耐性菌想定:
キノロン系抗菌薬(レボフロキサシンなど)
*国内で唯一小児適応のあるトスフロキサシン耐性化しやすく、臨床効果は怪しいため安易には使用しない。
日本では小児適応はないがレボフロキサシンも考慮。
5歳未満:レボフロキサシン20mg/kg/日,1日2回。
5歳以上:レボフロキサシン10mg/kg/日,1日1回。
*第3世代経口セフェム系抗菌薬であるセフジトレン・ピボキシルは倍量であれば理論上、BLNARに効果が期待できる可能性がありますが、カルニチン欠乏症のリスクが乳幼児や高齢者での処方には高いためメリットがデメリットより勝る場合にのみ選択肢に入れる程度で考えます。
*キノロン系抗菌薬は、あくまで超高度耐性菌などの場合など、「それ以外の選択肢がないため仕方なく処方する薬剤」であり、症状がひどいからという理由のみで処方してはいけません。QT延長症候群や末梢神経障害、錯乱、せん妄、幻覚等の精神症状、50歳以上の方のアキレス腱炎や断裂、重症筋無力症の悪化、大動脈瘤・大動脈解離などのリスク、Marfan症候群やEhlers-Danlos症候群などの大動脈瘤などを起こしやすい小児に対するリスクなど、重大なリスクを伴う抗菌薬でもあるため、2016年5月米国FDA(食品医薬品局)でも急性鼻副鼻腔炎や急性気管支炎、単純性尿路感染症には、他選択肢がある場合は処方するべきでないとしています。
*国内の肺炎球菌は、スムース型肺炎球菌(乳幼児に多い)では、ST合剤やドキシサイクリンに耐性菌が多く、重症例には選択してはいけません。ムコイド型肺炎球菌(成人に多い)では、病原性は強いが耐性菌であることは少ないため、選択肢になり得ます。
*経口抗菌薬での選択肢が難しい場合には、セフトリアキソン点滴静注であれば、肺炎球菌・インフルエンザ菌ともに耐性菌をもカバーしているため、対応可能となります。
急性中耳炎に抗菌薬入りの点耳薬は効くのか?
抗菌薬入り点耳薬として、ベストロン®耳鼻科用1%、ホスミシン®S耳科用3%、タリビッド®耳科用液0.3%、ロメフロン®耳科用液0.3%、コクレクス®耳科用駅1.5%などがあります。
点耳薬(抗菌薬)が中耳腔内に入れば、理論的には高濃度の抗菌薬が中耳腔に届くことが期待できます。しかし、鼓膜穿孔のない発赤と膨隆のみの中耳炎では投与しても効果は期待できません。また、耳漏を伴う中耳炎では、中耳腔が膿で充満し、鼓膜穿孔から拍動性耳漏が出ている状態であり、中耳腔内に入る余地はないため効果は期待できません。大穿孔であれば中耳腔に入ることは可能であり、鼓室内の耳漏を除去後に耳浴することで効果が期待できると考えられます。
点耳薬(抗菌薬)が中耳腔内に入れば、理論的には高濃度の抗菌薬が中耳腔に届くことが期待できます。しかし、鼓膜穿孔のない発赤と膨隆のみの中耳炎では投与しても効果は期待できません。また、耳漏を伴う中耳炎では、中耳腔が膿で充満し、鼓膜穿孔から拍動性耳漏が出ている状態であり、中耳腔内に入る余地はないため効果は期待できません。大穿孔であれば中耳腔に入ることは可能であり、鼓室内の耳漏を除去後に耳浴することで効果が期待できると考えられます。
緊急性の高い外科的治療を要する複雑性急性中耳炎
稀ではあるが外科的治療などを含め、急激な全身状態の悪化などを伴う緊急性の高い複雑性急性中耳炎となることがあります。そのベースには、急性乳様突起炎があり、それに伴い緊急外科的治療を必要とする合併症に頭蓋外合併症(耳後部骨膜下膿瘍、錐体尖炎・膿瘍、Bezoido膿瘍)、頭蓋内合併症(脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、S状静脈洞血栓症、細菌性髄膜炎、Gadenigo症候群)がありますので、その可能性があれば、緊急手術対応の可能な耳鼻咽喉科専門医への紹介が必要になります。
参考サイト・文献
1) 日本耳科学会, 他編: 小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年版. 第4版. 金原出版, 2018, p8-13.
2) Lieberthal AS, et al:Pediatrics. 2013; 131(3):e964-99.
3) Broides A, et al:Clin Infect Dis. 2009; 49(11): 1641-7.
4) Damoiseaux RA, et al:BMJ. 2000; 320(7231): 350-4.
5) Rosenfeld RM, et al:Laryngoscope. 2003; 113(10): 1645-57.
6) Jacobs J, et al:Pediatr Infect Dis J. 2001; 20(2): 177-83.
7) Venekamp RP, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2013;(1):CD000219.
8) Lieberthal AS,et al. Pediatrics. 2013 Mar;131(3):e964-99.
9) Maroeska MR, et al.Lancet. 2006; 368(9545): 1429-35.
10)永田 理希著.Phaseで見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた
2) Lieberthal AS, et al:Pediatrics. 2013; 131(3):e964-99.
3) Broides A, et al:Clin Infect Dis. 2009; 49(11): 1641-7.
4) Damoiseaux RA, et al:BMJ. 2000; 320(7231): 350-4.
5) Rosenfeld RM, et al:Laryngoscope. 2003; 113(10): 1645-57.
6) Jacobs J, et al:Pediatr Infect Dis J. 2001; 20(2): 177-83.
7) Venekamp RP, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2013;(1):CD000219.
8) Lieberthal AS,et al. Pediatrics. 2013 Mar;131(3):e964-99.
9) Maroeska MR, et al.Lancet. 2006; 368(9545): 1429-35.
10)永田 理希著.Phaseで見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた
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