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2024-09-03インフルエンザ
インフルエンザ
インフルエンザとかぜとの相違点
インフルエンザはプライマリ・ケア医が遭遇する最も頻度の高い疾患のひとつです。冬の季節性を特徴とし、かぜのような経過となる場合もありますが、以下の点でかぜとの違いがあるとされます(表参照)1)。
関節痛・筋肉痛などの全身症状が強く、①かぜよりもつらいことが多いのが特徴です。また、全身症状が強いながらも自然に良くなる方が多いのですが、②2次性の細菌性肺炎などにより重症化する患者群がいるのも大きな特徴で、この側面はオミクロン株となったCOVID-19とも似ているとも言えます。
関節痛・筋肉痛などの全身症状が強く、①かぜよりもつらいことが多いのが特徴です。また、全身症状が強いながらも自然に良くなる方が多いのですが、②2次性の細菌性肺炎などにより重症化する患者群がいるのも大きな特徴で、この側面はオミクロン株となったCOVID-19とも似ているとも言えます。
風邪とインフルエンザの症状比較表(まれ<時々<普通<良くある)
指標 | 風邪 | インフルエンザ |
症状の始まり | 徐々に | 突然 |
発熱(38℃以上) | まれ | 普通 |
痛み | わずか | 普通 |
寒気 | まれ | かなり普通 |
疲労、弱さ | 時々 | 普通 |
くしゃみ | よくある | 時々 |
胸の不快感、咳 | 軽度から中等度 | 普通 |
鼻づまり | よくある | 時々 |
のどの痛み | よくある | 時々 |
頭痛 | まれ | 普通 |
インフルエンザと抗微生物薬の適正使用
インフルエンザはかぜ同様に抗菌薬が無効な疾患です。2次性の細菌感染症が疑われる場合(2峰性の病歴)は有効です。また、抗ウイルス薬の適正使用も重要です。外来治療となる非ハイリスク患者では、症状を半日程度早く短くする薬ですが、ハイリスク患者では肺炎などの合併症による入院を減らす可能性も指摘されており、適切に治療介入を見極めることは大切と考えます2)。非ハイリスク患者では、抗ウイルス薬を処方しないで経過を診る方針でよいか?の良好な医療者-患者関係を築くことが大切になります。
<患者向けインフルエンザ教育素材>
インフルエンザもハイリスク患者でなければセルフケアも選択肢となる疾患です。一般市民向けのインフルエンザとその周辺に関する学びのツールがあります。診療や地域での勉強会の参考にしてみてください3)。
<セルフケアも選択肢の一つに>
インフルエンザに加えてCOVID-19には市販の検査キッドがあり、ハイリスク患者でなければかぜのような経過となる場合も多いことが国内のデータでも示されています4)。かぜ同様にインフルエンザ(COVID-19含む)もハイリスク患者でなければセルフケアも選択肢の一つになります。札幌市が作成した「新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの札幌市における現状備え」に具体的なセルフケアの考え方の記載がります5)。
プライマリ・ケアにおけるインフルエンザのポイント
COVID-19の流行により、かぜ・インフルエンザ診療が難しさを増しています。かぜ・インフルエンザ・COVID-19どれも誰もが何度も感染しうる感染症で、それに伴う医療のニーズは膨大です。医療インフラを維持するためにも、薬局・ドラッグストアによるセルフケアから医療機関による診療を医療インフラを維持できるよう、変わりゆく医療ニーズに、皆で合わせていけたらと思います。
予防から治療まで、医療者が適切な知識をもってインフルエンザとその周辺の教育を地域住民にできるようになることはとても大きいと考えます。
特に医師に大切なことは、それぞれにおけるハイリスク患者さんを的確に見極め、検査・治療薬の適正使用に努め、何よりそこに紛れ込む重篤な疾患を見逃さないことです。
「患者さんの不安を検査や薬ではなく、その人を診るアプローチで解決する」ことは、インフルエンザ診療にもとても必要なアプローチです。
予防から治療まで、医療者が適切な知識をもってインフルエンザとその周辺の教育を地域住民にできるようになることはとても大きいと考えます。
特に医師に大切なことは、それぞれにおけるハイリスク患者さんを的確に見極め、検査・治療薬の適正使用に努め、何よりそこに紛れ込む重篤な疾患を見逃さないことです。
「患者さんの不安を検査や薬ではなく、その人を診るアプローチで解決する」ことは、インフルエンザ診療にもとても必要なアプローチです。
参考サイト・文献
1) 米国CDC, Influenza (Flu): Cold Versus Flu,
https://www.cdc.gov/flu/symptoms/coldflu.htm, (参照 2024-01-08)
2) Dobson J, Whitley RJ, Pocock S, Monto AS. Oseltamivir treatment for influenza in adults: a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet. 2015 May 2;385(9979):1729-1737.
3) 東洋経済, 間違いだらけ!インフルの正しい「怖がり方」
「検査もしないし薬ものまない」という選択肢, https://toyokeizai.net/articles/-/147605 , (参照 2024-01-08)
4) Nakakubo S, Kishida N, Okuda K, Kamada K, Iwama M, Suzuki M, Yokota I, Ito YM, Nasuhara Y, Boucher RC, Konno S. Associations of COVID-19 symptoms with omicron subvariants BA.2 and BA.5, host status, and clinical outcomes in Japan: a registry-based observational study. Lancet Infect Dis. 2023 Nov;23(11):1244-1256.
5) 一般社団法人 Sapporo Medical Academy 厚生労働大臣賞最優秀賞受賞事業, コロナ/インフルとセルフケアの考え方, https://qr.paps.jp/U5Tpz, (参照 2024-01-08)
6) 抗インフルエンザ薬の使い方 亀田感染症ガイドライン
https://medical.kameda.com/general/medical/assets/22.pdf
7) インフルエンザ流行期に致死的な疾患を見逃さないための手引き 亀田感染症ガイドライン
https://medical.kameda.com/general/medical/assets/23.pdf
https://www.cdc.gov/flu/symptoms/coldflu.htm, (参照 2024-01-08)
2) Dobson J, Whitley RJ, Pocock S, Monto AS. Oseltamivir treatment for influenza in adults: a meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet. 2015 May 2;385(9979):1729-1737.
3) 東洋経済, 間違いだらけ!インフルの正しい「怖がり方」
「検査もしないし薬ものまない」という選択肢, https://toyokeizai.net/articles/-/147605 , (参照 2024-01-08)
4) Nakakubo S, Kishida N, Okuda K, Kamada K, Iwama M, Suzuki M, Yokota I, Ito YM, Nasuhara Y, Boucher RC, Konno S. Associations of COVID-19 symptoms with omicron subvariants BA.2 and BA.5, host status, and clinical outcomes in Japan: a registry-based observational study. Lancet Infect Dis. 2023 Nov;23(11):1244-1256.
5) 一般社団法人 Sapporo Medical Academy 厚生労働大臣賞最優秀賞受賞事業, コロナ/インフルとセルフケアの考え方, https://qr.paps.jp/U5Tpz, (参照 2024-01-08)
6) 抗インフルエンザ薬の使い方 亀田感染症ガイドライン
https://medical.kameda.com/general/medical/assets/22.pdf
7) インフルエンザ流行期に致死的な疾患を見逃さないための手引き 亀田感染症ガイドライン
https://medical.kameda.com/general/medical/assets/23.pdf
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