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2024-09-03かぜ(ウイルス性上気道炎)
かぜ(ウイルス性上気道炎)
かぜの定義
かぜはプライマリ・ケア医が遭遇する最も頻度の高い疾患のひとつです。「風邪症候群」のように、広くかぜ様症状を引き起こす疾患を総称して言う場合がありますが、近年では抗菌薬適正使用の側面からも「自然に良くなるウイルス性状気道感染症」のことを指します1)。薬剤耐性(AMR)アクションプランでは、2027年度までに2020年度と比較して経口抗菌薬の削減目標が具体的に提示されています2)。経口抗菌薬が処方されやすい代表的疾患の一つがかぜとされ、抗菌薬を処方しないで経過を診る方針で良いか?の良好な医療者-患者関係を築くことが大切になります。抗微生物薬適正使用の手引が参考になります2)。
抗菌薬使用量の目標値:2027年(目標値)(対2020年比)
指標 | 目標値 |
---|---|
経口第3世代セファロスポリン系薬の人口千人当たりの一日使用量 | 40%減 |
経口フルオロキノロン系薬の人口千人当たりの一日使用量 | 30%減 |
経口マクロライド系薬の人口千人当たりの一日使用量 | 25%減 |
かぜの特徴
風邪の平均発生率は、幼稚園児では年間5〜7回、成人になると年間2〜3回とされ、風邪による学校欠席・休職は多く、雇用者の仕事から失われる全時間の40パーセントが風邪によるものとされます。つまり、かぜは自然に良くなる特効薬のない疾患ではあるものの、とてもつらく、社会的な損失(医療負荷含む)も大きい疾患といえます。医療者が適切な知識をもってかぜとその周辺の教育を地域住民にできるようになることはとても大きいと考えます。
<一般市民向けかぜ教育素材>
かぜかかぜではないか?を患者さん自身が判断できるようになるために、一般市民向けの学びのツールがあります。診療や地域での勉強会の参考にしてみてください3)。
<セルフケアも選択肢の一つに>
かぜはセルフケア疾患の一つですが、その対処療法や感染予防も重要な知識になります。一般向けに視覚的にわかりやすく解説したものがあります。診療や地域での勉強会の参考にしてみてください4)。
ヘルス・グラフィックマガジン Vol. 46「かぜ」号発行 ~知っているようで実は知らない「かぜ」のこと~
https://saas.actibookone.com/content/detail?param=eyJjb250ZW50TnVtIjoyNTE0NDd9&detailFlg=0&pNo=1
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プライマリ・ケアにおけるかぜ診療のポイント
かぜへの抗菌薬処方は耐性菌の世界的驚異的拡大という側面から、医療者だけではなく、患者側も含めた認識の修正が求められています。そこで、まず大切なことは“かぜ"をあいまいな言葉とせずに、医学的な狭義の定義として「ウイルス性上気道感染症」とすることが重要です。すると「かぜに抗菌薬は100%無効」という図式ができます。
ところが、これでも現場で起こっている問題は全く解決しません。というのも、かぜを引き起こすウイルスはサブタイプも含めると200種類以上いるとされ、そのほとんどは医療機関では同定できません。つまり、風邪をウイルス性上気道感染症と定義づけても結局は、風邪は臨床症状から判断する曖昧疾患であることには変わりないのです。
となると医療者も患者も本当に風邪か?となり、100%細菌感染症は否定できないのであれば、安全・安心のためという両者の不安を解決するものとしての抗菌薬の立ち位置は変わらないことになります。実際、かぜ症状に抗菌薬を出すことで細菌感染症の予防効果はあります。では、かぜ症状に抗菌薬を出すことで、どのくらい細菌感染症の予防になるか? ですが、ここが4,000回に1回とされ(BMJ 2007; 335 (7627): 982)、この弊害として耐性菌の世界的驚異的拡大となっているのです。ここを医療者-患者で上手に“話し合う"のが大切です。
ここで大切なことは、このような事実を正論として伝えるのではなく、医療者と患者で良好な関係を築きながら
・「かぜとして抗菌薬なしで経過を見る方針」とできるか
・「悪化しないか心配」という患者さんの不安を抗菌薬で解決するのではなく、症状悪 化時の受診のタイミングを丁寧に説明し、抗菌薬ではなく、患者の思いを受け留め た上で「説明という処方」で診る
これが大切な時代になっています。
「患者さんの不安を検査や薬ではなく、その人を診るアプローチで解決する」ことは、かぜ診療にもとても必要なアプローチです。
ところが、これでも現場で起こっている問題は全く解決しません。というのも、かぜを引き起こすウイルスはサブタイプも含めると200種類以上いるとされ、そのほとんどは医療機関では同定できません。つまり、風邪をウイルス性上気道感染症と定義づけても結局は、風邪は臨床症状から判断する曖昧疾患であることには変わりないのです。
となると医療者も患者も本当に風邪か?となり、100%細菌感染症は否定できないのであれば、安全・安心のためという両者の不安を解決するものとしての抗菌薬の立ち位置は変わらないことになります。実際、かぜ症状に抗菌薬を出すことで細菌感染症の予防効果はあります。では、かぜ症状に抗菌薬を出すことで、どのくらい細菌感染症の予防になるか? ですが、ここが4,000回に1回とされ(BMJ 2007; 335 (7627): 982)、この弊害として耐性菌の世界的驚異的拡大となっているのです。ここを医療者-患者で上手に“話し合う"のが大切です。
ここで大切なことは、このような事実を正論として伝えるのではなく、医療者と患者で良好な関係を築きながら
・「かぜとして抗菌薬なしで経過を見る方針」とできるか
・「悪化しないか心配」という患者さんの不安を抗菌薬で解決するのではなく、症状悪 化時の受診のタイミングを丁寧に説明し、抗菌薬ではなく、患者の思いを受け留め た上で「説明という処方」で診る
これが大切な時代になっています。
「患者さんの不安を検査や薬ではなく、その人を診るアプローチで解決する」ことは、かぜ診療にもとても必要なアプローチです。
参考サイト・文献
1) 米国CDC, Antibiotic Prescribing and Use: Common Cold, https://www.cdc.gov/antibiotic-use/colds.html, (参照 2024-01-08)
2) 厚生労働省, 薬剤耐性(AMR)対策について, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120172.html, (参照 2024-01-08)
3) Medical Note, (参照 2024-01-08)
1かぜの定義とは?他の病気と見分けるために。
https://medicalnote.jp/contents/160223-013-CT
2かぜの症状にはどのようなものがある?」
https://medicalnote.jp/contents/160223-015-PE
3かぜと細菌感染の違い-医療者はどのように見分けている!?
https://medicalnote.jp/contents/160223-016-OR
4典型的なかぜに罹ったとき、病院や薬局ではどのような薬が処方される?
https://medicalnote.jp/contents/160223-017-OW
5かぜだと思ったのに-かぜに似た別の病気には何がある?
https://medicalnote.jp/contents/160223-019-KM
4) ヘルス・グラフィックマガジン Vol. 46「かぜ」号発行 ~知っているようで実は知らない「かぜ」のこと~, (参照 2024-01-08)
https://saas.actibookone.com/content/detail?param=eyJjb250ZW50TnVtIjoyNTE0NDd9&detailFlg=0&pNo=1
2) 厚生労働省, 薬剤耐性(AMR)対策について, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120172.html, (参照 2024-01-08)
3) Medical Note, (参照 2024-01-08)
1かぜの定義とは?他の病気と見分けるために。
https://medicalnote.jp/contents/160223-013-CT
2かぜの症状にはどのようなものがある?」
https://medicalnote.jp/contents/160223-015-PE
3かぜと細菌感染の違い-医療者はどのように見分けている!?
https://medicalnote.jp/contents/160223-016-OR
4典型的なかぜに罹ったとき、病院や薬局ではどのような薬が処方される?
https://medicalnote.jp/contents/160223-017-OW
5かぜだと思ったのに-かぜに似た別の病気には何がある?
https://medicalnote.jp/contents/160223-019-KM
4) ヘルス・グラフィックマガジン Vol. 46「かぜ」号発行 ~知っているようで実は知らない「かぜ」のこと~, (参照 2024-01-08)
https://saas.actibookone.com/content/detail?param=eyJjb250ZW50TnVtIjoyNTE0NDd9&detailFlg=0&pNo=1
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